
在宅診療クリニックにて受講したセミナー内容をまとめました。
脳梗塞の疫学
・日本では年間約29万人が新たに発症している。
(悪性腫瘍、心疾患、老衰に次ぐ死亡率)
・要介護の原因疾患の一つである。
脳梗塞とは?
動脈硬化が原因で起こる脳卒中の種類の一つ。

※プラークとは?
動脈の内壁にコレステロールや脂質などによる脂肪のかたまりが蓄積したもの。これが動脈を狭くしたり、破れて血栓を形成することで脳血管を詰まらせ、脳梗塞を引き起こす原因となる。
脳梗塞(脳卒中)の原因は?

脳梗塞の症状は?
【症状の代表例】
・めまい
・片側の麻痺
・呂律が回らない
・物を落とす
・片目が見えづらい
ほとんど痛みは伴わないことが多く、初期症状に気付きにくい。

脳梗塞の治療について

①発症から4時間30分以内
tPA(血栓溶解)療法
発症から4.5時間以内の急性期脳梗塞に対する標準的な治療で、動脈から薬を注入するのみ。tPAという薬剤は、詰まった血栓を溶かす作用がある。これを急速に点滴し、脳の血栓を溶かし、再度血液が流れるようにする治療するのだが、この治療は血栓を溶かす作用が強力であり、合併症として出血を引き起こすリスクがある。

②発症から24時間以内
血管内治療(血栓回収療法)
tPA療法によって症状の改善が認められない場合や、治療の適応外の症例に対して、カテーテルを用いた「血栓回収療法」という血管内治療が行われる。自己拡張型ステントを広げ、血栓を溶かすのではなく、地引網のようにステントごと血栓をからめとる方法。

③内服による保存的治療
血液が固まりにくくなるサラサラ系の薬を永久的に飲むことで、『進行を遅らせる』『再発を防ぐ』ことに繋がる。ただし、2年後の内服継続率は約50パーセントとされており、自己判断でやめてしまう方が多い。

脳梗塞発症後のリハビリについて

①急性期:身体が固まってしまわないように体を動かすリハビリ
②回復期:歩行や日常生活動作を集中的に行うリハビリ
③生活期:麻痺の悪化や体が動かなくならないように行うリハビリ
※回復期病院での最大入院可能日数は150日
(高次機能障害を伴う場合は180日)
※最近の平均入院日数は78.2日
合併症予防について
①誤嚥性肺炎対策
・食事姿勢の工夫(30°以上のギャッジアップ)

・食形態の適切な調整
・口腔ケアの徹底
※ギャッジアップとは適正な角度まで持ち上げること。
②廃用症候群予防
・早期離床と定期的な体位変換
・褥瘡リスク評価と予防
③うつ・認知機能低下への注意
・早期発見と対応
発症後の家族支援について
①介護技術の実践的指導
②介護負担の評価と軽減策
③緊急時対応の明確化(ActFAST方の指導)

まとめ
【脳梗塞の対策】
・暴飲暴食、喫煙、塩分、食生活など生活習慣の見直し。
・高血圧、心房細動、糖尿病、脂質異常症など危険因子は警戒が必要。
・ほとんど痛みは伴わないので、脳梗塞の代表的な症状は把握及び家族共有は大切。
【脳梗塞発症】
とにかく時間勝負!短い程、後遺症が残りにくい。
【脳梗塞発症後の実践ポイント】
・再発予防を最優先する
・合併症予防に重点を置く
・日常生活でのリハビリを工夫する
・家族負担を配慮した支援の実施